三菱自動車アウトランダーPHEVの基本スペック(レビュー車両)
- レビューグレード:G セーフティパッケージ
- パワートレイン:4B11 MIVEC / NA / 2000cc / 4-Cylinder / DOHC / 145PS + 前後モーター
- 販売価格:3,590,000円〜 (ガソリンモデル:2,510,000円〜)
アウトランダーPHEVの外装デザイン
まず外観ですが、私個人では『これだけで買う気がしない』と感じてしまうほど感性に合わないと思いました。
一つ前の旧型アウトランダーは、ものすごく格好が良いと言える程ではないですが、シンプルで上品さがありました。アウトドアだろうが、丸の内のオフィス街だろうが、どこへ行っても”サマになる”のです。
しかし今回の新型アウトランダーはとにかくゴテゴテと余計なラインが多く、全体的にぼってりとしたデザインでスマートさが無いのです。特にアイラインの縦線や、一体感の無いフォグランプに古臭さすら感じます。ホイールも線が多すぎるし、サイドのやたらと主張したPHEVロゴが、昭和時代の”未来感”を彷彿とさせます。
三菱自動車に何があったかは知りませんが、前作に携わった人とは全く異なる人たちが作ったのでは?と疑わずにはいられません。
アウトランダーPHEVの内装デザイン
正直使い勝手はこれまでの左右対称デザインでも十分ですし、運転手だけが乗る車でも無いので助手席を蚊帳の外にした感じに疑問を持ちます。
実は助手席に乗る人(例えば奥さんや友達)はインパネを気にするものです。以前別の車で、コストダウンで省かれた部分の蓋を見て『なんでこれ付いてないの?』と初見で突っ込まれた事すらあります。
ナビは標準装着タイプのMMCS(三菱電機製)ですが、ボタンが多くこれまた90年代の香りがします。カメラの表示や中身は悪くないのですが、PHEVと言う”未来指向の車”にあって、全く先進的ではありません。テスラのように「大型のタブレット型画面」がここにあってもおかしくないのではないでしょうか。
特別『これはいかん』と思ったのが、ハザード横のシートベルト警告灯です。こんなに巨大な表示である必要はあったのでしょうか?こちらも昭和の車にありそうな配置で、内装のチープ感向上に貢献しています。
チープなのはセンターパネルだけではありません。窓の開閉は「運転席のみ全オート」タイプ。実は旧型の後期前半頃までは全オートだったのです。つまりコストダウンで省かれています。ボタンの部品が全体的に薄く、安くなっている感じが見て分かります。プッシュした際の感触も軽いものです。
※全オートタイプが搭載された車は、ETACSの機能で、下車した後にリモコン操作で窓を閉める事が出来ます。
こちらはセンターの操作部。最近の車はこのあたりの収納や配置・質感で勝負していますが、とりあえずパーツを並べただけのような印象を持ちます。
4WDの操作部は元々剛性感のあるダイヤルでしたが、安っぽい普通のボタンになっているし、サイドブレーキレバーは旧型からの使い回し。また唐突に突き出したセレクトレバーは左に寄せられ、配置も良くありません。
デザインの悪さもさることながら、ここだけシルバー色押しというのは内装のバランスとしておかしいだろ!?と、誰も文句を言わない・言えないのが、大企業三菱自動車の良いところなのかもしれませんが・・・。
総合的に見るととにかく内装の使い勝手が悪くなっている部分が目立ちます。車内収納は2〜3箇所減っていますし、ドリンクホルダー・ボトルホルダーも半分の数になってしまいました。
旧型から乗り換えたら「あれ?置き場が無い!」なんて馬鹿馬鹿しいお話になりそう。結局どこもかしこも減点方式で、コストダウンが主題になっているようです。
アウトランダーPHEVの運転フィーリング
ハイブリッド車は最初モーターで車が動きだして、比較的早い段階でエンジンが始動します。しかしPHEVはバッテリーが大きいので、長い距離をモーター=バッテリーだけで走れる事が出来るのです。
アウトランダーPHEVは重量級(1.7トン超)なので「大した距離は走れないだろう」と油断していたのですが、私の適当な運転でも15キロ以上バッテリーのみで走ってしまいました。その時点でもバッテリーはまだまだ残っていましたから、30キロ超の走行は確実だったと思います。
踏めば違和感無く加速しますし、パワー不足はありません。ずっとエコモードで走っていたのですが、むしろ”ちょうど良くならしてくれる”感じで、自然な運転ができました。ステアリング操作も軽くなっていますし、旧型より運転はしやすいと思います。
一点気になるのはメーター。多分部品供給元の問題もあって、他社と同じ配置のメーターですが、正直左側のトヨタ式パワーメーターは見にくいし不要だと感じます。
旧型アウトランダーは液晶画面に「アクセル開度=瞬間燃費計」がリアルタイムにバーで表示されるので、そちらの方が一覧性が高いのです。デジタル表示の方が”未来感”がありますし、わざわざ古い部分を押し出す理由はありません。
アクセルやブレーキと言った基本的な部分は全く問題ありませんが、気になるのは後輪側が跳ねる点です。
バッテリーやモーターでかなり重いはずですが、段差を越える度に後部が”バコッ”と跳ねるのが気になりました。安定感に不安はないのですが、どうにもそこだけチープです。またロードノイズも非常に目立ちます。
もしやタイヤがサマー用タイヤでは無いからかもしれませんが、パワートレインからの音が発生しない分余計に気になります。
アウトランダーPHEVの総合評価
しかし今ここにある新型アウトランダーは、継ぎ接ぎだらけのバランスを欠いた車に見えます。様々なパートの担当者が好き勝手に造り、それを取りまとめるプロジェクトマネジャーがコントロールに失敗したかのような印象を持ちます。
旧型を担当していたマネジャーやメンバーが、まともにプロジェクトを遂行していれば、こんな完成度にはならないでしょう。発展性は低いながらも、最低でもキープコンセプトでおさまったはずです。
PHEVシステムは確かに立派だし、ハイブリッド先駆者のプリウスよりもずっと乗りやすくて自然です。しかし販売価格400万円を超える高級車がこの完成度だと、当然ハリアーや外国車と比較されて結局敬遠されてしまうでしょう。
PHEVがスゴイですよ!とアピールするのは良いですが、それは顧客の要望の全てではないはずです。購入したくなるポイントのバランスが問われてきます。
今後もこのデザイン路線やチープ・コストダウン路線で進むのかもしれませんが、かつて買ってくれたお客様が”何を良いと思って買ってくれたのか”を見直すべきと深く感じます。
ちなみにデザインについてはマイナーチェンジで大幅に変更がなされましたが、三菱お得意の”フロントデザイン改良”に留まっており、やはり車としてのトータルバランスは依然として不足しています。
2020年代に入り急速にEV・PHEVのラインナップが増加していますが、ドイツ御三家やトヨタなどが質の高さ、デザインの良さ、バランスの良さを訴求する中で、このレベルでは比較対象にすらならないのではないか、というのがユーザー目線での結論です。