2020/05/26

【Car Review】メルセデス・ベンツ CLA 180 シューティングブレーク Mercedes-Benz CLA180 Shooting Brake レビュー

CLA180シューティングブレーク Shooting-Brake
これまでジャガーやAudiなどの欧州車を運転する機会に恵まれてきましたが、ついに最高峰とも言える”ベンツ”へと乗車出来る事になりました。今回はCLA180シューティングブレークで日本の道を走ります。




メルセデス・ベンツCLA180シューティングブレークの基本スペック(レビュー車両)

  • レビューグレード:CLA180シューティングブレーク
  • パワートレイン:M270/ ターボ / 1600cc / 4-Cylinder / DOHC / 122PS
  • トランスミッション:7DCT


メルセデス・ベンツ CLA 180 シューティングブレークの外装デザイン

CLA180シューティングブレーク Shooting-Brake2
誰もが自動車界のハイブランドと認めるメルセデス・ベンツ。これまでBMW、Audi、ジャガーなどなど様々な欧州車を運転する事が出来ましたが、ベンツだけはなかなか機会が訪れませんでした。

『ベンツはゆったり乗る車だから運転は面白くない』といった意見を聞くこともありましたが、まずは自分で試してみなければ真実は分かりません。待っていても機会が訪れるわけではありませんので、旅のついでにレンタルする事としました。

CLA180シューティングブレーク Shooting-Brake3
初めてのベンツとしてチョイスしたのは、CLA180シューティングブレーク。元々のCLAクラスは”4ドアクーペ”と呼称される珍しい形状の車ですが、シューティングブレークはそのステーションワゴン版と言えます。

通常のCクラス、Eクラスのステーションワゴンよりも、屋根が低く、より鋭角な流線形で構成されています。屋根が低く見えるせいか、ベンツにしては比較的車体も小ぶりな印象。実際の寸法ではほとんど差がないSUVタイプのGLAの方が、大型に見えるのは不思議なものです。

車体を目の前にして最も印象的なのは”塗装の美しさ”です。欧州車は日本車と比べると”塗装が丁寧で分厚く見える”傾向があるのですが、ベンツは更にその一歩先をゆく”濃さ”と表現出来るものを感じます。

日本の高級車を眺めると時折いびつな反射が見え隠れし、素直な美しさを感じませんが、ベンツは自然な光の反射、輝き、どれをとっても人間の感性に響くものがあります。

ベンツの価格やリセールバリューの良さを考えれば”資産”として所有される方も多いでしょうが、この美しい車体であれば車庫に置いておくだけで”オブジェ”のような感覚すら持てると思います。

CLA180シューティングブレーク Shooting-Brake4
最近の日系自動車業界の傾向として、メッキパーツを多用したり、流線形と称してやたらと曲線や凹凸を増やしたデザインが増加していると認識しています。

攻撃的で、やや粗野な印象すら受ける変わったデザインが巷では流行りのようですが、常識ある落ち着いた大人であれば、”ジェントル”な自動車を乗りこなすのも、また嗜みとしてはよろしいのではないでしょうか。

AudiやBMWにも共通して言える事ですが、総じて欧州系の車両は非常にシンプルなデザインながら、独特の個性を発揮しています。

主張しすぎないエアロパーツ、ギラギラとしすぎない装飾品、部分部分がバラバラになっているのではなく、統一されて設計された流れるような曲線を描く車体。やたらと押しの強い日本車が道路の真ん中で”居座っている”と表現出来るとすれば、ベンツは”颯爽と道路の上を流れている”印象を受けるのです。

『ただ単に高価なだけだろう』との印象を持っていたベンツの車。外観のデザインだけにフォーカスしても、必要なコストを掛け、良く考えられている事が見えてきます。

メルセデス・ベンツ CLA 180 シューティングブレークの内装デザイン

CLA180 Engine room
良い物は見えないところにお金をかけていると思い、エンジンルームを開いてみます。まず実感するのは、一つ一つの部品が美しいこと。普段目に見えないエンジンカバーにすら、立派なロゴが光っています。

エンジンルームの金属の縁にも注目です。日本車だと金属の薄さが目立ち、末端の処理も雑な事があります。しかしベンツは分厚い金属がとても丁寧に溶接されており、触ると滑らかさが分かります。

ドイツ車は”剛性が高い”とよく言われますが、細かな部分の丁寧な処理が車の良さを引き出しているのです。

CLA180 Interior
内装を見ていきましょう。インテリアは他のモデルと共通した”ディスプレイ+2段配置の操作パネル”で構成されます。

上からカーナビや車内の操作を表示するディスプレイ(収納は不可)、オーディオやハザード、シートヒータースイッチ、最後にデュアルオートエアコンです。

プラスチックの面が多く、日本車と比べて際立って高級感があるわけではありませんが、メッキの装飾やボタン一つ一つのデザイン、質感に落ち着きがあります。

流石に電話型のキーパッドは時代に取り残されたデザインですが、ちょうどスマートフォンが出てきた時代に設計された車なので、致し方無いでしょう。この後のメルセデス各モデルからは、取り除かれています。

CLA180 Interior2
メルセデスで最も他車と違うなと思わせるのが、革巻きハンドルの質感です。本革巻きステアリングは今時珍しい装備ではありませんが、メルセデスの革は触った時の感触がしっかりしていて、しっとりと手に収まる感じがします。

ファッション系の高級ブランドは良い革の仕入れから始まるものですが、車業界のハイブランドも同様なのかもしれません。

CLA180 Interior3
メーターは液晶ディスプレイを備えた、2眼メーターです。最近の日本車はメーターの表記すらチープに手を抜く場合があるのですが、美しいフォントと背面のデザインが合わさってこちらも高級感があります。ただし燃料計と油温計は無理してつけた感があり、ここだけはアンバランスに見えてしまいます。

液晶ディスプレイのインフォメーションも必要にして十分で、普通にドライブする限り何ら不満はありません。むしろ情報が多すぎると運転に集中出来ないと思うので、情報過多は避けたいものです。

メルセデス・ベンツ CLA 180 シューティングブレークの運転フィーリング

CLA180 exterior-right
初めてのメルセデス乗車でしたが、乗り始めた瞬間からじわっとした乗り心地、直進性、車体の安定感に圧倒されます。日本車にありがちな微振動は皆無で、地方道に良くある大小の段差を越えても、不快な衝撃を感じさせません。

1.6リッターターボエンジンはガォーンという気持ちの良い音が響くものの、過給が十分では無い段階では、本領が発揮されないのかゼロ発進の出足はゆったりとしたものです。ディーゼルエンジンの鋭いトルクを知っていると、物足りなさすら感じます。しかし一度スピードが乗り始め30km/h程度になると反応が変わり、気持ち良く加速していきます。

特に高速道路走行ではその鋭さが顕著です。合流車線から強めにアクセルを踏み込むと、水の上を滑るように一切の雑味無く100km/hまで速度が立ち上がります。あまりにスムーズすぎて、どこまでもスピードが出てしまうかのような怖さすら感じるレベル。CLAはベンツのグレードの中では決して高い方では無いですが、十分アウトバーンの環境でも走れるように設計されている事が良く分かりました。

コーナリングは低速でも高速でも、一切のブレが無く安定してカーブを曲がる事が出来ます。車体重量はありますが、アンダーステア・オーバーステアという言葉とは無縁です。ただし高速走行に入るとステアリングの反応が敏感になりすぎてしまいます。わずかな修正舵で左右にブレてしまう印象を持ちました。精度が非常に高いが故に、遊びが少ないのかもしれません。また直進性がとても良いので、余計に小さな動きが目に付く気もします。

横幅1,780mmという少し小さめで、視覚で認識しやすいサイズも良い方向に効いています。少し狭めの道でも通り抜けに不安が無く、日本の地方道にはちょうど良い設計です。

今回は200km程度の走行で、燃費計表示は15km/lでした。パワーをしっかりと感じられる大変良いターボエンジンでしたが、積極的にアクセルを踏んでもこれだけの燃費が出てしまうのには驚きを隠せません。ハイオク指定ではありますが、この燃費であれば許容出来るものです。

東京のような都市圏でドライブすると燃費は急激に悪化してしまいそうですが、地方道や高速道路走行では更に良い燃費を目指せそうな予感がします。

メルセデス・ベンツ CLA 180 シューティングブレークの総合評価

CLA180 side plate
CLA180の乗車後、運良くSUVタイプのGLAやよりグレードの高いCクラスワゴンを運転する機会に恵まれましたが、CLAの方がトータルバランスの良さを感じました。車重、空力性能等の差とは思いますが、CLAの滑るように加速する様はGLAやCクラスでは感じられない絶対的な面白さです。

外装、内装共に質感は十分で、所有する喜びの面でも決して上位クラスの車種と遜色はありません。わずか2日間の乗車でしたが、降りる時には『本当に手に馴染む良い車』だと愛着すら湧いてしまいました。

ところで欧州車は安全基準の変更などもあるためか、モデルチェンジの度に横幅大きくなり1900mm~2000mm級が当たり前になりつつあります。日本の道路はとにかく幅が狭い事は誰もが知る事ですが、そんな環境ではそろそろ限界を迎えつつあるのは明白です。CLAのようなサイズレベルで、質感を上げていく方向性が続いてくれればと個人的には強く思います。






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