三菱自動車パジェロジュニア(後期型)の基本スペック(レビュー車両)
- レビューグレード:アニバーサリーリミテッド E-H57A
- パワートレイン:4A31 / NA / 1100cc / 4-Cylinder / SOHC / 80PS
- 駆動方式:FRベースパートタイム4WD
- トランスミッション:3AT
- タイヤ・ホイールサイズ:205/70R 15
- 足回り:Front マクファーソンストラット / Rear 5リンク式
- 定員:4名
- 安全装備:ABS / エアバッグ(運転席のみ) / サイドドアビーム
- 燃料消費:10・15モード燃費 13.2km/L
- 販売価格:1,698,000円
- ストーリー:大ヒットしたRV軽自動車”パジェロミニE-H56A”の車体がベース。オーバーフェンダーの装着によるワイド化、1100cc 4A31エンジンの搭載により普通自動車扱いとなる。車内はパジェロミニと同じであるが、安全装備やアクセサリーの強化で差別化されている。前期型と比較して後期型は、安全装備や基本装備が拡充されている。
パジェロジュニアの外装デザイン
【Car Review】三菱自動車 パジェロジュニア 前期型 MITSUBISHI Pajero Jr First レビュー
詳しくは前期型レビューで取り上げていますが、わずか3年しか製造されなかったパジェロJrの売り上げは芳しいものとは言えませんでした。そこで販売後半から多数登場したのが、後期標準型や特別仕様車です。カラーの選択肢を増やしたり、オプション装備を標準装着する事で、ルックスに変化を持たせるようになりました。
前期型の選択可能色は赤茶色や緑色と言った地味な色が多く、オプションもオフロード等の山向けが多数を占めています。一方後期型はより若者を狙ったのか、ホワイトや水色、シルバーといった爽やかな美しい色が増え、ダブルサンルーフ仕様までラインナップされました。
三菱自動車らしく方向性が右往左往してしまった様子もありますが、どんな色でも装備でも何やら似合ってしまうのは、この車のプラスポイントと言えます。
外装デザインの特徴的な部分
●グレードロゴの廃止
ドア側面上部にペイントされていた、グレードロゴが消えています。例えばZR-I、ZR-IIといった記載がなされていました。過去から現在を見直していっても、ドアの側面にグレードを表示しているのはパジェロミニやパジェロJr位だったかもしれません。
●アルミホイールの意匠変更
アルミホイールはいくつかのデザインがオプションで選択出来ましたが、最もベーシックなタイプのホイールについてデザインが変更されています。スポーク部分が薄くなり、根元に突起が施されています。これは後期型から採用されている”フロントベンチレーテッドブレーキ”の影響もあるかもしれません。
●グリルガードの意匠変更
オプションとして人気だったグリルガード(カンガルーバー)のデザインが、金属パイプ型からより柔らかなデザインに変更されています。これは対人保護の規制が変更になったためで、対人衝突時に死傷を避ける構造となっています。もちろんガードが付いていない事が一番で、近年では国内における純正パーツとしてグリルガードを提供するメーカーは皆無では無いかと思われます。
●Bピラーへのバッジ添付
BピラーにPajero Jrと記載されたバッジを添付する車両が多くなっています。当時スバル等でもブランドコラボでバッジを添付する例が多数ありましたので、流行に乗った仕様と言えます。
●UVカットガラス、プライバシーガラスの採用
構成によりますが、UVカットガラスやプライバシーガラスが採用され、快適度の向上を狙っています
パジェロJrの内装デザイン
内装デザインの特徴的な部分
先に記した通り、おじさん車から若者車への変化を狙った節があります。そのためか、サンバイザーにお化粧鏡(バニティーミラー)が設置されました。あまり使う頻度が多いとは言えない装備ですが、後付けが出来るものではないので便利です。
●後部ワイパーミラー操作の全レバー化
前期型では後部ワイパーウォッシャースイッチがボタン式でしたが、本体操作レバーと一体化されました。ボタン式は一見便利ですが、ボタンの反応が良くなく押しても噴射されない事がありました。その点を踏まえた改良と考えられます。
●シート生地の変更
一部の仕様のみとなりますが、地味な配色の標準シート生地、ドアトリム生地が明るい配色に変更となっています。
●抗菌パーツの装備
一部の仕様のみとなりますが、ステアリング、インサイドドアハンドル、シフトノブ、パーキングブレーキに抗菌処理が施されています。(コロナ時代にむしろ重宝される装備です)
特別仕様車オプションパーツ例
・フォグランプ
・フォグランプステーカバー
・サイドミラーメッキカバー
・デジタル表示マルチメーター
・ルーフレール
・リアスポイラー(LEDストップランプ付)
・ネームバッジ ....etc
中でもコンパス、高度計、外部温度計、時計を備えたマルチメーターは人気パーツでした。2020年代であれば、スマートフォンのアプリで表示出来る情報ばかりですが、意外にも標準でこの手の情報機器が装備されている車種は多くありません。コンパスなどは全く見ませんが、温度計と時計はすぐ目に入る位置にあるので重宝します。
それぞれ装備は1〜2万円程度のものですが、個別に追加していくとかなりの金額になってしまうので、非常にお得な組み合わせと言えます。標準のままだと少しのっぺりとした外見になるとの声もありますので、フォグランプ程度は装着されていると精悍な印象になります。
パジェロJrの運転フィーリング
【Car Review】三菱自動車 パジェロジュニア 前期型 MITSUBISHI Pajero Jr First レビュー
●フロントベンチレーテッドディスクブレーキの採用
前期型では単純なディスクでしたが、後期以降ではベンチレーテッドブレーキが採用されています。これは二枚のディスクを重ね、間に空気の抜け道をつくって熱を冷ましやすくする構造で、ブレーキを多用する環境でフェードを防ぎます。
実際に前期型では1日運転していると、エンジンブレーキを多用していてもブレーキの効きが悪くなる場面がありました。ブレーキは安全装備そのものですから、強化は正しい選択と言えます。
ところで、90年代の車を評価する際に壁となるのは経年劣化です。車全体の見た目や内装の状態は良くても、サスペンションやエンジンといった重要部分は目に見えませんので、自然劣化が発生している場合があります。また長期稼働車の場合調子が悪いからと部品を変えても、かえってバランスが崩壊してしまう場合もあります。気に入っていても泣く泣く手放す人が多いのは、維持の難しさによるところが大きいでしょう。
パジェロJrの総合評価
車種によってはマイナーチェンジを繰り返す度に、見える部分の装備や装飾が外され価値を落としてしまう場合もあります。パジェロJrは不人気車であったが故に、その逆を進んだ事はユーザー目線では幸いでした。特に後期型で採用された塗装カラーは、今の目線で見ても非常に鮮やかで目新しさがあります。
その後三菱自動車が辿った歴史背景も大きいと思いますが、この車種以後はコストダウンが強く意識され、遊び心の薄れた車が増えていきました。これは他のメーカーも同じことで、サイズは大きく見栄えは立派だけど、肝心なところでチープさが綻ぶ車が少なくありません。個性がより尊重される時代になったのに、プロダクトの選択肢はむしろ狭まってはいないでしょうか。
パジェロJrはどんなに古くなっても、どんなに状態が劣化しても、運転していて確実に道をトレースしてくれる安心感がありました。質実剛健、乗って安心感のある頼もしい相棒が、これからの時代に再度登場してくれる事を願って止みません。