日産アリアの基本スペック(試作・展示車)
- グレード:2WD 65kWh バッテリー搭載車
- パワートレイン:電動モーター / 160kw / 300Nm
- 航続距離:450km(WLTCモード日産車内計測値)
- タイヤ・ホイールサイズ:235/55R 19
- 寸法:全長4595mm / 全幅1850mm / 全高1655mm
- 定員:5名
- 安全装備:インテリジェントエマージェンシーブレーキ・アラウンドビューモニター・FCW
- 販売価格:5,000,000円(予定)
- ストーリー:2020年に発表されたクロスオーバータイプの電気自動車。発売は2021年を予定しており、発売の1年近く前に発表されるのは異例。航続距離の増加、プロパイロット2.0採用による運転支援機能の強化はもちろん、”タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム"をテーマに、内外装のデザインにも力を入れている。
外装デザイン
初見の感想は『美しい!』で、ボデイーのどこを見てもキラキラと輝いています。一時期流行した過度なメッキ装飾や攻撃的な曲面は排除され、丸い美しい面と、角のある面が適度に併用されています。
外装デザインの特徴的な部分
普通の車であればあえて空気口を設けて、エンジンの冷却を担うグリル。アリアは純粋な電気自動車ですので、それを強調するためにポリカーボネードのような素材で覆われています。一方で内側には格子状の模様が施され、後ほどご紹介する”タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム”を体現しています。
新採用の日産ロゴ。ライトが仕込まれているので光ります。思えばロゴが光る車は見た事がなく、量産車でも採用されるかが気になるところ。
一つ懸念があるとすると、ポリカーボネードは長期間使用すると黄ばんでしまい、せっかく車体が綺麗でも劣化して見える弱点があります。例えば長期に耐えられる素材を採用するなど、美しさを保てる工夫が期待されます。
ボディーを見ると、非常に美しい塗装がなされており、過去の国産車のレベルとは一線を画す雰囲気を醸し出しています。またSUVモデルではお馴染みのフェンダーアーチは、黒いプラスチックではなく、ピアノブラック処理がなされた部品が装着されます。
19インチタイヤとホイール。スタッフの方によるとショーモデルと瓜二つだそうで、この車を特異性を示す部分になっています。未確認ですが、アルミホイールとプラスチックのエアロカバーを足したタイプに見えます。
後部で目立つのは、大きな張り出し。目測でドアのフラットな部分より10cmは飛び出しています。フロントと同様、過度な強調ではなく、落ち着いたデザインでまとめられています。
ちなみにプロパイロット2.0搭載車には、後部屋根のシャークフィンアンテナが2つ設置されます。GPS情報を補正するための、準天頂衛星みちびきの電波を受信するためだそうで、ラジオやテレビの電波との混信を防ぐための処置と推測出来ます。
内装デザイン
内装デザインの特徴的な部分
アリアでは物理ボタンの排除を念頭に置いており、静電容量式のタッチボタンが随所に設置されています。一見したところ普通の車にありがちな動作ボタンはほとんどなく、”車の電源”をオンにするとボタン表示が浮かび上がる仕組みです。
車のメーターとナビの部分には二つのワイド液晶が設置されます。テスラのように画面の巨大さはありませんが、あえて横長のデザインを採用したとのこと。人間の目の動きを分析し、横の動作が自然である事を割り出したそうです。
余計なものを排除した結果、内装のパネル類はまるで高級な家具のようにスムーズな曲線を描き、黒系の木目調があしらわれます。車というより”航空会社のラウンジ”に居るかのような気持ちになりました。
ステアリングの革は、日本車の汎用的なものとは異なるしっとり柔らかさのある素材。心地が良く、いつまでも触っていたくなります。
フロントガラスは寝かせたタイプ。窓の広さはある一方、思ったよりも上部の縁が頭に近く、スカイライン等のスポーツモデルと大差無い印象を持ちます。
確認したところ、ベースとしたショーモデルより小型化した結果、車高が低くなったとのこと。またミラーの上部がセンサーやカメラ類の収納場所となっている様子で、その張り出しが広く上方視界を遮っているのでした。
視界の広さは快適性に直接繋がる部分で、クロスオーバーのイメージや、ラウンジのような室内の広さとは相反するものです。量産車ではこの部分が改善されると、より良い車となっていく予感があります。
車のスイッチが家電と同じようなロゴになっています。足元の構造物が全て無くなったため、どこまでも足を伸ばせそうな広さ。奥に薄く光る格子状のパネルが設置されています。
ドアとAピラーの接触箇所にツィーター(or小型スピーカー)が設置されています。パイオニアによると、ツィーターはこの場所に設置するのが音響的に最適とのこと。ダッシュボードに設置する車が多い中で、アリアは細かな部分がよく考えられています。
量産車ではどうなるか不明ですが、現段階ではBOSEのサウンドシステムが装着されていました。
機器ルーム(普通車のエンジンルーム)には小さな吸音材やサイレンサーが複数設置されており、静粛性の高さが期待出来ます。電気自動車と言えど、ロードノイズや機器の作動音が皆無とは言えませんので、その対策と考えられます。
後部座席からの視界は更に広く、運転席以上に開放感にあふれます。写真では表示が難しいのですが、座席裏のパネルにも微妙な筋が表現されており、日本庭園の岩のよう。
センターコンソールには座席ヒータースイッチ、USB端子(USB-C付)、エアコンの吹き出し口が備わります。
ところでこのコンソール、何故かコンソールごと電動で前後に動きます。てっきり上部の肘置きだけがスライドすると思ったのですが、運転席側のスイッチで動作します。
後部座席ドアにはところどころ格子状のパネルが。小さいながらも和を表現しているようです。
全体として足元が広く、座席はしっとりとコシがある座り心地。左右の窓も広く開放感に溢れます。
後部座席を倒すと広いスペースが出現。車中泊派には嬉しいフラット仕様です。
天井にはサンルーフ。量産時に全てのグレードで標準装備されるかは不明ですが、室内のゆったりした雰囲気を醸し出すには、必要な装備と感じられます。
日産アリアの総合所見
あくまで所見ですが、アフターコロナ時代にふさわしい設計の車であると感じています。
・シンプルで過剰なものが無い。一方で高い品位を保てるようデザインや素材で工夫している。こだわりを持って造られている
・空間が広くとられることで、余裕を感じる事が出来る
・ジャパニーズというキーワードを入れることで、本来日本にあった「間合い」が上手に表現されている
アリアの計画がスタートしたのは4〜5年前の事と考えられます。つまりコロナは想定されていませんでしたが、偶然にしてキーワードが当てはまる車になっています。ここ数年流行してきた『押しの強い車』とは真逆のアプローチで、派手さを好む人には受け入れられ辛いでしょう。
一方でアフターコロナの『余裕がある生き方』を追い求める人には心地良いもので、選ぶ人は選ぶ車になっていくものと思います。日本らしさを追求したのも正解で、本来の日本が持つべき”間合い”がデザインに反映された事で、より心地良さに繋がっています。
比較対象としてテスラ モデル3も触った事があるのですが『ミニマリズムの塊』で、本当に何もありません。一方で品位はしっかりと体現されており、それが受けて、世界中でファンが増え続けているのはご承知の通り。
車が自動化したり、電気化することで、車が提供してきた付加価値は一変します。そうすると内装に凝ってみたり、静粛性を追求したり、製造側のアプローチが変わっていくのは至極当然のこと。
当初は日産のアプローチを理解出来ない人が沢山いるでしょうが、10年〜20年後に繋がる大胆な挑戦であると感じられました。ここからの更なる進化・イノベーションが非常に楽しみです。