2020/07/26

【Car Review】日産 アリア 試作車 NISSAN ARIYA PROTOTYPE レビュー

日産アリア NISSAN ARIYA
日産から発表された新型クロスオーバーEVアリア。東京・銀座のNISSAN CROSSINGで試作車に触らせていただきました。




日産アリアの基本スペック(試作・展示車)

  • グレード:2WD 65kWh バッテリー搭載車
  • パワートレイン:電動モーター / 160kw / 300Nm
  • 航続距離:450km(WLTCモード日産車内計測値)
  • タイヤ・ホイールサイズ:235/55R 19
  • 寸法:全長4595mm / 全幅1850mm / 全高1655mm
  • 定員:5名
  • 安全装備:インテリジェントエマージェンシーブレーキ・アラウンドビューモニター・FCW
  • 販売価格:5,000,000円(予定)
  • ストーリー:2020年に発表されたクロスオーバータイプの電気自動車。発売は2021年を予定しており、発売の1年近く前に発表されるのは異例。航続距離の増加、プロパイロット2.0採用による運転支援機能の強化はもちろん、”タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム"をテーマに、内外装のデザインにも力を入れている。


外装デザイン

日産アリア フロント
アリアはクロスオーバーを名乗る通り、比較的車高の低いSUVタイプのスタイルを採用しています。見ての通り『モーターショーのショーモデル』のようで、ここまで忠実にショースタイルを継承したのは、ISUZU ビークロス以来ではないでしょうか。

初見の感想は『美しい!』で、ボデイーのどこを見てもキラキラと輝いています。一時期流行した過度なメッキ装飾や攻撃的な曲面は排除され、丸い美しい面と、角のある面が適度に併用されています。

外装デザインの特徴的な部分

日産アリア フロントパネル
まずはフロント。

普通の車であればあえて空気口を設けて、エンジンの冷却を担うグリル。アリアは純粋な電気自動車ですので、それを強調するためにポリカーボネードのような素材で覆われています。一方で内側には格子状の模様が施され、後ほどご紹介する”タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム”を体現しています。

新採用の日産ロゴ。ライトが仕込まれているので光ります。思えばロゴが光る車は見た事がなく、量産車でも採用されるかが気になるところ。

一つ懸念があるとすると、ポリカーボネードは長期間使用すると黄ばんでしまい、せっかく車体が綺麗でも劣化して見える弱点があります。例えば長期に耐えられる素材を採用するなど、美しさを保てる工夫が期待されます。

日産アリア フロントサイド
ボディーを見ると、非常に美しい塗装がなされており、過去の国産車のレベルとは一線を画す雰囲気を醸し出しています。またSUVモデルではお馴染みのフェンダーアーチは、黒いプラスチックではなく、ピアノブラック処理がなされた部品が装着されます。

日産アリア ホイール
19インチタイヤとホイール。スタッフの方によるとショーモデルと瓜二つだそうで、この車を特異性を示す部分になっています。未確認ですが、アルミホイールとプラスチックのエアロカバーを足したタイプに見えます。

日産アリア 後部サイド
後部で目立つのは、大きな張り出し。目測でドアのフラットな部分より10cmは飛び出しています。フロントと同様、過度な強調ではなく、落ち着いたデザインでまとめられています。

ちなみにプロパイロット2.0搭載車には、後部屋根のシャークフィンアンテナが2つ設置されます。GPS情報を補正するための、準天頂衛星みちびきの電波を受信するためだそうで、ラジオやテレビの電波との混信を防ぐための処置と推測出来ます。

内装デザイン

日産アリア 運転席
日産アリアの最大の強みは内装にあると言っても過言ではありません。過去の日産車の内装なシンプルで、使い勝手の良さが目立つものでした。アリアもその路線を継承していますが、より内装クオリティを向上し、なおかつ”日本らしさ”を随所に織り込んだものとなっています。

内装デザインの特徴的な部分

日産アリア ダッシュボード
まずはフロントパネル。

アリアでは物理ボタンの排除を念頭に置いており、静電容量式のタッチボタンが随所に設置されています。一見したところ普通の車にありがちな動作ボタンはほとんどなく、”車の電源”をオンにするとボタン表示が浮かび上がる仕組みです。

車のメーターとナビの部分には二つのワイド液晶が設置されます。テスラのように画面の巨大さはありませんが、あえて横長のデザインを採用したとのこと。人間の目の動きを分析し、横の動作が自然である事を割り出したそうです。

余計なものを排除した結果、内装のパネル類はまるで高級な家具のようにスムーズな曲線を描き、黒系の木目調があしらわれます。車というより”航空会社のラウンジ”に居るかのような気持ちになりました。

ステアリングの革は、日本車の汎用的なものとは異なるしっとり柔らかさのある素材。心地が良く、いつまでも触っていたくなります。

日産アリア フロントガラス
フロントガラスは寝かせたタイプ。窓の広さはある一方、思ったよりも上部の縁が頭に近く、スカイライン等のスポーツモデルと大差無い印象を持ちます。

確認したところ、ベースとしたショーモデルより小型化した結果、車高が低くなったとのこと。またミラーの上部がセンサーやカメラ類の収納場所となっている様子で、その張り出しが広く上方視界を遮っているのでした。

視界の広さは快適性に直接繋がる部分で、クロスオーバーのイメージや、ラウンジのような室内の広さとは相反するものです。量産車ではこの部分が改善されると、より良い車となっていく予感があります。

日産アリア エアコン
車のスイッチが家電と同じようなロゴになっています。足元の構造物が全て無くなったため、どこまでも足を伸ばせそうな広さ。奥に薄く光る格子状のパネルが設置されています。

日産アリア ツィーター
ドアとAピラーの接触箇所にツィーター(or小型スピーカー)が設置されています。パイオニアによると、ツィーターはこの場所に設置するのが音響的に最適とのこと。ダッシュボードに設置する車が多い中で、アリアは細かな部分がよく考えられています。

量産車ではどうなるか不明ですが、現段階ではBOSEのサウンドシステムが装着されていました。

日産アリア 機器ルーム
機器ルーム(普通車のエンジンルーム)には小さな吸音材やサイレンサーが複数設置されており、静粛性の高さが期待出来ます。電気自動車と言えど、ロードノイズや機器の作動音が皆無とは言えませんので、その対策と考えられます。

日産アリア 後部座席
後部座席からの視界は更に広く、運転席以上に開放感にあふれます。写真では表示が難しいのですが、座席裏のパネルにも微妙な筋が表現されており、日本庭園の岩のよう。

日産アリア 後部コンソール
センターコンソールには座席ヒータースイッチ、USB端子(USB-C付)、エアコンの吹き出し口が備わります。

ところでこのコンソール、何故かコンソールごと電動で前後に動きます。てっきり上部の肘置きだけがスライドすると思ったのですが、運転席側のスイッチで動作します。

日産アリア 後部ドア
後部座席ドアにはところどころ格子状のパネルが。小さいながらも和を表現しているようです。

日産アリア 後部エリア
全体として足元が広く、座席はしっとりとコシがある座り心地。左右の窓も広く開放感に溢れます。

日産アリア 車中泊OK
後部座席を倒すと広いスペースが出現。車中泊派には嬉しいフラット仕様です。

日産アリア サンルーフ
天井にはサンルーフ。量産時に全てのグレードで標準装備されるかは不明ですが、室内のゆったりした雰囲気を醸し出すには、必要な装備と感じられます。

日産アリアの総合所見

日産アリア フロント
まだ試作車であり、今後1年かけて販売準備が整っていくアリア。見たところ『もう乗れる』と思えるほど、実用的な部分は整えられています。推測ですが、今時の車はもはや電子機器なので、ソフトウェアやバッテリー制御の部分が最後の課題であると考えられます。

あくまで所見ですが、アフターコロナ時代にふさわしい設計の車であると感じています。


・シンプルで過剰なものが無い。一方で高い品位を保てるようデザインや素材で工夫している。こだわりを持って造られている
・空間が広くとられることで、余裕を感じる事が出来る
・ジャパニーズというキーワードを入れることで、本来日本にあった「間合い」が上手に表現されている


アリアの計画がスタートしたのは4〜5年前の事と考えられます。つまりコロナは想定されていませんでしたが、偶然にしてキーワードが当てはまる車になっています。ここ数年流行してきた『押しの強い車』とは真逆のアプローチで、派手さを好む人には受け入れられ辛いでしょう。

一方でアフターコロナの『余裕がある生き方』を追い求める人には心地良いもので、選ぶ人は選ぶ車になっていくものと思います。日本らしさを追求したのも正解で、本来の日本が持つべき”間合い”がデザインに反映された事で、より心地良さに繋がっています。


比較対象としてテスラ モデル3も触った事があるのですが『ミニマリズムの塊』で、本当に何もありません。一方で品位はしっかりと体現されており、それが受けて、世界中でファンが増え続けているのはご承知の通り。

車が自動化したり、電気化することで、車が提供してきた付加価値は一変します。そうすると内装に凝ってみたり、静粛性を追求したり、製造側のアプローチが変わっていくのは至極当然のこと。

当初は日産のアプローチを理解出来ない人が沢山いるでしょうが、10年〜20年後に繋がる大胆な挑戦であると感じられました。ここからの更なる進化・イノベーションが非常に楽しみです。






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